こんにちは、しゅがーです。
ベクトルの問題の解説を読んでいると、「一次独立」という単語を見かけませんか?
係数比較する際は、この「一次独立」という単語を合言葉のように書け、と教わった人もいるかと思います。
「なぜ一次独立なら係数比較していいんだろう…?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか?
今回の記事を読めば、この疑問がすっきり晴れると思います。それでは、やっていきます。
目次
一次独立の定義
まずは定義から確認するのが数学の原則です。
一次独立の定義は数式的な定義と、図形的な定義の二つがあります。(厳密には後者は定義ではないですが、ここでは定義とします)
定義:数式ver
さっそく結論から。
上記が定義です。
定義:図形ver
次に図形的な定義を示します。
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が互いに平行でなく、\(\vec{0}\)でないとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
実際にこの数式verと図形verの関係性を確認してみましょう。
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が互いに平行なときと、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)の少なくとも一つが\(\vec{0}\)のとき、
数式verの定義から実際に\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が一次独立でないことを確かめます。
数式verと図形verの関係性
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が互いに平行なとき
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が平行ならば、
\(\vec{a}=k\vec{b}\)と表せます。
これを数式verの定義の式
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)
に代入します。
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)
\(\vec{a}=k\vec{b}\)を代入して、
\(sk\vec{b}+t\vec{b}=0\)
\((sk+t)\vec{b}=0\)
よって、\(\displaystyle k=-\frac{t}{s}\)のとき(\(s\neq0\))
\(0\)でない任意の\(s,t\)に対して
\((sk+t)\vec{b}=0\)
は成立する。
すなわち、このとき、\(0\)でない任意の\(s,t\)に対して
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)
が成立する。
よって、定義
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
から、\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立でない。
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)の少なくとも一つが\(\vec{0}\)のとき
これも先ほどと同様に確認してみると、
例えば\(\vec{a}=\vec{0},\vec{b}=\vec{0}\)のとき
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)となるときを考えると、代入して、
\(s\vec{0}+t\vec{0}=0\)
\((s+t)\vec{0}=0\)
このとき、0でない任意の\(s,t\)に対して、
\((s+t)\vec{0}=0\)
すなわち
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)
は成り立ってしまうので、
定義
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
から、\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立でない。
一方が\(\vec{0}\)のときも確認してみましょう。
例えば\(\vec{a}=\vec{0}\)のとき
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)となるときを考えると、代入して、
\(s\vec{0}+t\vec{b}=0\)
このとき、少なくとも\(s\)については\(0\)でない数でも成立してしまうので
定義
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
から、\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立でない。
結論
以上より、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が互いに平行なときと、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)の少なくとも一つが\(\vec{0}\)のとき、
数式verの定義から実際に\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が一次独立でないことを確かめられました。
よって、
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
と
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が互いに平行でなく、\(\vec{0}\)でないとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
は同じ定義であることが確認できます。
一次独立なら係数比較ができる簡単な理由
次に係数比較です。係数比較するには一次独立である必要があります。詳しく説明していきます。
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が一次独立のとき、
\(\vec{c}=s\vec{a}+t\vec{b}\)、
\(\vec{c}=u\vec{a}+v\vec{b}\)
と表せるとき、
\(s=u,t=v\)
である。
さて、この係数比較は一次独立のときしかできません。
なぜか?
実はとても簡単で、数式verの定義を使います。
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
どうやって使うか結論から言うと、
\(\vec{c}=s\vec{a}+t\vec{b}\)
\(\vec{c}=u\vec{a}+v\vec{b}\)
の2式を代入して、
\(s\vec{a}+t\vec{b}=u\vec{a}+v\vec{b}\)
式変形して、
\((s-u)\vec{a}+(t-v)\vec{b}=0\)
となります。ここで、\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立であるので、定義
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。
を使って、
\((s-u)\vec{a}+(t-v)\vec{b}=0\)のとき、\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立であるから、
\(s-u=0,t-v=0\)
すなわち
\(s=u,t=v\)
となり、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)が一次独立のとき、
\(\vec{c}=s\vec{a}+t\vec{b}\)、
\(\vec{c}=u\vec{a}+v\vec{b}\)
と表せるとき、
\(s=u,t=v\)
である。
にたどり着きます。
以上で一次独立と係数比較に関する話は終わりです!
定義からさかのぼって考えれば、凄く単純な話だとお分かりいただけたのではないでしょうか。
さらにベクトルの詳しい部分まで理解したい人は以下の記事を。
\(s\vec{a}+t\vec{b}=0\)のとき
\(s=0,t=0\)となるとき、
\(\vec{a}\)と\(\vec{b}\)は一次独立である。