どうもこんにちは、しゅがーです!
数学の中でも「ベクトル」という概念は、特に抽象的であり、みなさんが理解に苦しむ部分の一つです。
例えば、「方向と大きさを持つもの」といった具体的なイメージにとらわれがちですが、ベクトルの本質はそれ以上に抽象的であり、そのためにもやもや感や苦手意識を抱く原因になりやすいのです。
しかし、このもやもや感はベクトルの本質を正しく理解することができれば、解消されることが多いです。
ベクトルとは、座標の延長線上にある存在で、あらゆる空間での「位置」や「方向」を表す強力なツールです。この本質を理解することができれば、ベクトルをより自由に使いこなせるようになり、そのメリットは計り知れません。
この記事では、ベクトルの本質について丁寧に解説し、その抽象度が高いからこそ得られる「自由度」について詳しく見ていきます。
この記事を読んでいただければ、きっとベクトルに対する苦手意識も薄れ、すっきりと理解できるようになるでしょう。
ベクトルの本質を理解するためによくある問題を思い出してみましょう
次のような構造の問題に、皆さんも一度は出会ったことがあるのではないでしょうか。
「\(\overrightarrow{OP}\)を\(\overrightarrow{OA}\)と\(\overrightarrow{OB}\)を用いて表せ」
こうした問題を見た瞬間に、いくつか疑問が浮かんだり、戸惑ったりするかもしれません。しかし、実はこういった構造の問題がベクトルの本質を表しています。
ここで重要なのは、ベクトルを使うことで任意の平面上or空間上の点を表現できるということです。
より詳細には:
- 平面上の任意の点は、一次独立な2つのベクトルを使って表現することができる。
- 空間上の任意の点は、一次独立な3つのベクトルを使って表現することができる。
これが非常に重要なルールであり、ベクトルにおける基本的な考え方の一つです。このルールを意識しながら解くことが、ベクトルを用いた問題を理解するための鍵となります。
ここで重要なキーワードが「一次独立」です。もし理解していない人がいたら以下の記事を読んでみてください。
実際、こうした問題は「点を表現してください」というメッセージを含んでおり、これはつまり、座標だけでなくベクトルを使って自由度の高い形で点を表現してほしい、という意味を持っています。
このように考えると、ベクトルの本質が少しずつ見えてくるはずです。単に座標で点を表すのではなく、ベクトルを使うことでより広い範囲での表現が可能となり、自由度が上がるのです。
「\(\overrightarrow{OP}\)を\(\overrightarrow{OA}\)と\(\overrightarrow{OB}\)を用いて表せ」
例えばこちらの問題の答えが
\(\overrightarrow{OP}=2\overrightarrow{OA}+3\overrightarrow{OB}\)
だったとしましょう。
この点の表現のキモはOが始点だということです。つまりOが中心といったイメージですよね。
ここで、ベクトルの重要な公式:
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{AP}-\overrightarrow{AO}\)
を思い出すと、
\(\overrightarrow{OP}=2\overrightarrow{OA}+3\overrightarrow{OB}\)
上記の答えはAに始点を変更できるということです。
\(\overrightarrow{AP}-\overrightarrow{AO}=-2\overrightarrow{AO}+3\overrightarrow{AB}-3\overrightarrow{AO}\)
よって\(\overrightarrow{AP}=-4\overrightarrow{AO}+3\overrightarrow{AB}\)
このように始点(=基準点のようなもの)を自由自在に変更できるという点で、ベクトルのほうが座標よりも自由度が高いというのがなんとなくわかっていただけたのではないでしょうか?
座標空間においては、常に中心はOですからね。
座標とベクトルの関係
まず、\(P(x,y)\)という座標を考えてみましょう。\(x\)と\(y\)は実数ですので、この点Pは平面座標上の任意の点を表すことができますね。このような座標の表現は、数学の中でもよく使われる基本的な概念です。
ここで、ベクトルを用いてこの点Pを表現してみます。2つの一次独立なベクトルを使うことで、Pを表すことができます。例えば、\(x\)方向のベクトルを
\(\overrightarrow{OA}=(1,0)\)
\(y\)方向のベクトルを
\(\overrightarrow{OB}=(0,1)\)
としましょう。
この2つのベクトルを使って点Pを表す式は次のようになります。
\(\overrightarrow{OP}=x\overrightarrow{OA}+y\overrightarrow{OB}\)
これによって、点\(P(x,y)\)はベクトルの形式で表現され、結果として通常の座標と同じようにPを表すことができるわけです。
つまり、座標空間とは、\(x\)方向の単位ベクトル\((1, 0)\)と\(y\)方向の単位ベクトル\((0, 1)\)という2つの一次独立なベクトルを使って表現されていると言えます。
しかし、ここで「一次独立」という概念に注目すると、\((1, 0)\)や\((0, 1)\)以外のベクトルでも、このような表現が可能であることに気づきます。例えば、\((1, 1)\)と\((0, 1)\)といったベクトルの組み合わせでも、一次独立であるので任意の点Pを表現することができます。
一次独立である限り、どのベクトルの組み合わせを使っても、同じ平面上の点を表すことができるのです。
このように、ベクトルという表現は特定のベクトルに依存しているのではなく、一次独立なベクトルの組み合わせによって柔軟に表現できるという自由度があります。
これが、ベクトルの持つ抽象的な性質の一つであり、座標の拡張された見方とも言えるでしょう。
垂直かつ単位ベクトルじゃなくてよくね?
座標空間では、垂直かつ単位ベクトルの2つのベクトル、つまり(1, 0)と(0, 1)を使って点を表現することについて説明しました。
しかし、少し視点を変えてみましょう。ベクトルの本質は「一次独立」という条件さえ満たしていれば、必ずしも垂直である必要も、単位ベクトルである必要もないのです。これにより、さらに自由な形で任意の点を表現できるようになります。
例えば、\((1, 0)\)や\((0, 1)\)という垂直なベクトルの代わりに、\((1, 1)\)や\((1, 2)\)といった一次独立の任意の2つのベクトルが一次独立であれば、これらを使って同様に平面上の点を表現することができます。
この一次独立という条件を満たせば、点の表現に必要な自由が確保されているのです。
座標系における(1, 0)と(0, 1)は、私たちが慣れ親しんだ「垂直かつ単位ベクトル」という条件に基づいていますが、より広く考えれば、これに縛られる必要はありません。
垂直でなくても、単位ベクトルでなくても、一次独立なベクトルの組み合わせなら、どんな点でも表現できるわけです。これによって、座標上の点を表現する方法はさらに柔軟で自由度の高いものになります。
こうした視点を持つことで、ベクトルが持つ真の力を理解することができ、さらに高度な問題やより一般的な空間に対応することができるようになります。
まとめ
ベクトルとは、座標の延長線上にあるもので、平面や空間における点や方向を表現するための非常に強力な道具です。
その本質を理解するためには、「一次独立」という条件さえ守っていれば、垂直であろうとなかろうと、単位ベクトルであろうとなかろうと、自由にベクトルを選べることが重要です。
この考え方は、座標の概念を「拡張」するものだと捉えると良いでしょう。これまで私たちが慣れ親しんできた\((1, 0)\)や\((0, 1)\)といった2つの垂直な単位ベクトルという、固定された基準から一歩踏み出し、自由度を広げることで、より柔軟で創造的な表現が可能になります。
つまり、ベクトルは「座標」の枠にとらわれず、平面・空間を自由に飛び回るためのツールです。
「一次独立」というルールを理解し活用することで、これまで以上に数学の世界が広がり、複雑な問題にも取り組めるようになるでしょう。
ぜひこの「拡張された座標の概念」を自分の中に取り入れて、数学の新しい視点を手に入れてください。
さらに、ベクトルの解き方の部分の解説が以下の記事です。
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