こんにちは、しゅがーです。
今回はベクトルの解き方について解説していきます。
よくある悩みの一つとして、
「平面ベクトルはそこそこ解けるんだけど空間ベクトルになった途端解けなくなる・・・」
があります。
しかしながら、これは実は違っていて、「平面ベクトル」と「空間ベクトル」は結局本質は
同じなのです。というのも、
「一次独立な二つのベクトルは平面上の任意の点を表せる」
これが平面ベクトルの本質でしたが、これが空間ベクトルだと
「一次独立な三つのベクトルは空間上の任意の点を表せる」
となるだけです。ベクトルが一本増えただけで、本質は変わりません。
つまり平面ベクトルだろうが空間ベクトルだろうが、扱い方は変わらないということで、これがベクトルの非常に便利なところなのです。
それではやっていきましょう!
目次
ベクトルのよくある構造の問題の解き方
「\(\overrightarrow{OP}\)を\(\overrightarrow{OA}\)と\(\overrightarrow{OB}\)を用いて表せ。」
このようなタイプのベクトルの問題をよく見たことあるのではないでしょうか。
このようなタイプの問題は解き方はある程度決まっていて、
(1)与えられた条件から立てられる条件式を考える
(2)条件式の数だけ文字を設定
(3)条件(垂直 or 共線 or 共面など)で文字を求める
これで解けます。
メタな視点を持とう
ここで持っておいてほしい考え方が、「メタ的な視点」です。
というのも、受験数学の問題は「解けるように出来ている」という大原則があります。
そのため、
設定する文字の数=条件式の数
となるように出来ているのです。
つまり、
「条件って何個あるんだろう?」
と考えて、
その数だけ文字を置いて良い
と考えるわけです。
この考え方は中学生の連立方程式の文章題でよくある考え方ですよね。
しかし、この考え方は中学数学だろうが高校数学だろうが関係なく、「受験」数学に共通してるのです。
なぜなら受験数学の問題は解けるように出来ているから。
まとめると、
「受験数学の問題は解けるように出来ている」
→「問題文に存在する条件から立てられる条件式の数だけ文字をおける」
→「文字を置いてみてその文字を求めれば、それが答えになるように文字を置く」
という逆算的な思考をするわけです。
この、受験数学の問題は解けるように出来ているというメタ的な視点を常に持っておいてほしいのです。
共線条件、共面条件、垂直条件を確認
ここで、共線条件、共面条件、垂直条件を確認してみましょう。
というのも、さきほど問題文中に「条件」があったら立てられる条件式を考えると説明しました。
この「条件」がまさに共線条件・共面条件・垂直条件となることが非常に多いのです。
さらに共線条件・共面条件・垂直条件全てに共通するのが、与えられた問題文の条件を図に起こしてみることです。
その結果、図的にそれぞれの条件を満たすならば条件式を立てられると考えるのがわかりやすいのです。
共線条件
それではまず共線条件。問題文で与えられた条件を図に起こしてみて、図的に以下のようになっていれば条件式を立てられます。
この瞬間、立てられる条件式は以下の3つです。(※何も見ず自力で立てられるようにしましょう)
\(\overrightarrow{OP}=(1-t)\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}\)
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{AB}\)
\(\overrightarrow{AP}=t\overrightarrow{AB}\)
この3つの条件式の中から、
「問題を解くのに都合がいい形はどれかな?」
と考えて選んでいくわけです。
共面条件
次に共面条件。図的に以下のようになっていれば、条件式を立てられます。
この瞬間、立てられる条件式は以下の3つです。(※何も見ず自力で立てられるようにしましょう)
\(\overrightarrow{OP}=(1-s-t)\overrightarrow{OA}+s\overrightarrow{OB}+t\overrightarrow{OA}\)
\(\overrightarrow{OP}=\overrightarrow{OA}+s\overrightarrow{AB}+t\overrightarrow{AC}\)
\(\overrightarrow{AP}=s\overrightarrow{AB}+t\overrightarrow{AC}\)
ちょっと形が複雑だなって思ったら、共線条件と式の形を比較してみれば簡単です。
冒頭で、「空間だろうと平面からベクトルが1本増えただけ」って説明した理由がわかったのではないでしょうか。
この3つの条件式の中から問題を解くのに都合の良い形を選びます。
垂直条件
最後に垂直条件。これは見抜くのは簡単ですよね。問題文中に垂直があったら良いわけですから。
ただ、空間ベクトルで見逃しがちな垂直条件があって、
「平面と垂直なベクトルのとき」
です。このとき、条件式を2つ立てられます。
このような状況のとき
\(\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
\(\overrightarrow{OP}\cdot\overrightarrow{AC}=0\)
この2つの条件式を立てられます。これは注意しておきましょう。
それでは、実際に問題を通してやっていきましょう。
問題1
(1)は与えられたベクトルの条件式から、ベクトルの引き算を使うだけです。
次に(2)、(3)です。
ベクトルの解き方を見てみましょう。
(1)与えられた条件から立てられる条件式を考える
(2)条件式の数だけ文字を設定
(3)条件(垂直 or 共線 or 共面など)で文字を求める
というわけで、与えられた問題文の条件から立てられる条件式はなにか?を考えていきます。
さきほども説明したように、図に起こしてみましょう。
この時点で、条件は2つありますよね。
・Dが直線AP上にある
・Dが直線BC上にある
よって条件式は2つ立てられます。
そしてすでに
\( \overrightarrow{AD}=\alpha \overrightarrow{AP} \)
と問題文で置いてくれています。
さらに(1)から、
\( \overrightarrow{AP}=-\frac{5}{7}\overrightarrow{AB}+\frac{9}{7}\overrightarrow{AC} \)
となるので、
\( \overrightarrow{AD}= -\frac{5}{7}\alpha\overrightarrow{AB}+\frac{9}{7}\alpha\overrightarrow{AC} \)
となり、今回考える2つの一次独立なベクトルは
\(\overrightarrow{AB}\)と\(\overrightarrow{AC}\)
だとわかります。つまりこの2つの1次独立なベクトルで係数比較すれば良いです。
さて、もう1本条件式を立式する際、以下の3つの立式のうちどれが適しているかわかりますか?
正解は一番下の式です。
今回の問題でいうと、
\( \overrightarrow{BD}=t \overrightarrow{BC} \)
とおきます。
なぜかというと、(3)を見越しているからです。
(3)で求めるものは比です。よってこの立式の形が3つの立式の中で比を一番見やすいのです。
あとは始点をAに揃えてあげれば、
\( \overrightarrow{AD}-\overrightarrow{AB}=t \overrightarrow{AC} -t\overrightarrow{AB}\)
\( \overrightarrow{AD}=(1-t) \overrightarrow{AB} + t\overrightarrow{AC}\)
という形にできました。
\(\overrightarrow{AB}\)と\(\overrightarrow{AC}\)の2つの1次独立の式で表せたので、係数比較で求めて終わりです。
答えです。
問題2
三角形ABCにおいて、\(AB=2、AC=3、\angle{A}=60^\circ\)、\(\overrightarrow{AB}=\vec{b}、\overrightarrow{AC}=\vec{c}\)とする。
このとき、三角形ABCの外心をOとして、\(\overrightarrow{AO}\)を\(\vec{b}\)と\(\vec{c}\)を用いて表せ。
(滋賀大)
次の問題です。これは外心の性質をおさえておけば解けます。
外心の性質とは「垂直二等分線の交点」ですよね。
よって図を書いてみると、以下のようになります。
ベクトルの解き方を思い出すと、
(1)与えられた条件から立てられる条件式を考える
(2)条件式の数だけ文字を設定
(3)条件(垂直 or 共線 or 共面など)で文字を求める
まず与えられた条件から立てられる条件式を考えると、
\(\overrightarrow{OD}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
\(\overrightarrow{OE}\cdot\overrightarrow{AC}=0\)
を立てられます。
次に条件式の数だけ文字を設定します。
今回2個も条件があり、
\(\overrightarrow{AO}\)を\(\vec{b}\)と\(\vec{c}\)を用いて表すので、素直に
\(\overrightarrow{AO}=s\vec{b}+t\vec{c}\)
と置けばいいです。
あとはさきほどの2つの条件式
\(\overrightarrow{OD}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
\(\overrightarrow{OE}\cdot\overrightarrow{AC}=0\)
よりこの文字を消去すれば良いだけですね。
答えです。
問題3
三角錐OABCにおいて、点R、S、Tをそれぞれ辺OA、AB、OC上に
OR:RA=1:3、AS:SB=1:1、OT:TC=1:9
となるようにとる。\(\overrightarrow{OA}=\vec{a},\overrightarrow{OB}=\vec{b},\overrightarrow{OC}=\vec{c}\)とおくとき、
(1)\(\overrightarrow{RS},\overrightarrow{RT}\)を\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)を用いて表せ。
(2)辺BC上の点Pを\(\overrightarrow{BP}=t\overrightarrow{BC}\)とするとき、\(\overrightarrow{RP}\)を\(t,\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)で表せ。
(3)点Pが3点R、S、Tで決まる平面上にあるとき、(2)における\(t\)の値を求めよ。
(1)、(2)は基本的なベクトルの足し算・引き算を使うだけです。
(3)をやっていきます。
ベクトルの解き方を思い出します。
(1)与えられた条件から立てられる条件式を考える
(2)条件式の数だけ文字を設定
(3)条件(垂直 or 共線 or 共面など)で文字を求める
与えられた条件を分析します。
問題文中の状況を図に起こしてみると、以下のようになります。
よって、条件は2つ
・PはBC上にある→共線条件
・PはRST平面上にある→共面条件
これより、2つのベクトルの式をを立式することが出来ます。
ここで(2)より、今回考えるのは\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)の3つの一次独立なベクトルです。
よって、係数比較した際に3つの条件式が得られます。
よって3つの文字を置けるわけです。
共線条件→1文字
共面条件→2文字
となって、辻褄があいます。
今回は共線条件の方は(2)で置いてくれていますね。
よって共面条件については、以下の3つの中から問題を解くのに都合がいい形で立式します。
今回は一番下の式の形で立式すれば良いです。
というのも、(1)が誘導になっているのに気づくはずです。
\(\overrightarrow{RS}\)と\(\overrightarrow{RT}\)を\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)で表せているからです。
よって
\(\overrightarrow{RP}=\alpha\overrightarrow{RS}+\beta\overrightarrow{RT}\)
とおいて、それぞれ\(\vec{a},\vec{b},\vec{c}\)の形に分解して、共線条件の式と係数比較で終わりです。
答えです。
問題4
Oを原点とする\(xyz\)空間に3点\(A(4,-6,2)\),\(B(1,-5,3)\),\(C(1,-9,1)\)がある。
Oから三角形ABCを含む平面に下ろした垂線が、この平面と交わる点をHとし、
Hから直線ABに下ろした垂線の足をQとする。次の問いに答えよ。
(1)\(\overrightarrow{OH}\)を成分で表せ。
(2)\(\overrightarrow{AQ}\)を成分で表せ。
(東京農工大)
ベクトルの解き方を思い出します。
(1)与えられた条件から立てられる条件式を考える
(2)条件式の数だけ文字を設定
(3)条件(垂直 or 共線 or 共面など)で文字を求める
与えられた条件を分析します。
問題文中の状況を図に起こしてみると、以下のようになります。
「(1)\(\overrightarrow{OH}\)を成分で表せ。」
からやっていきます。
与えられた条件から立てられる条件式を考えると、
・HはABC平面上の点→共面条件
・\(\overrightarrow{OH}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
・\(\overrightarrow{OH}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
です。
よって、共面条件で2文字おいて、下2つの垂直条件でおいた文字を求めるという方針が立てられます。
つまり
\(\overrightarrow{OH}=(1-s-t)\overrightarrow{OA}+s\overrightarrow{OB}+t\overrightarrow{OC}\)
とおいて、
・\(\overrightarrow{OH}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
・\(\overrightarrow{OH}\cdot\overrightarrow{AC}=0\)
でおいた文字を求めます。
(1)の答えです。
「(2)\(\overrightarrow{AQ}\)を成分で表せ。」
をやっていきます。
ベクトルの解き方を思い出します。
(1)与えられた条件から立てられる条件式を考える
(2)条件式の数だけ文字を設定
(3)条件(垂直 or 共線 or 共面など)で文字を求める
与えられた条件を分析します。
問題文中の状況を今度はわかりやすく平面の図に起こしてみると、以下のようになります。
与えられた条件から立てられる条件式を考えると、
・Qは直線AB上にある→共線条件
・\(\overrightarrow{HQ}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
となります。
よって、
共線条件で文字を1つ置く→垂直条件で文字を求める
という方針が立ちます。
つまり
\(\overrightarrow{AQ}=\alpha\overrightarrow{AB}\)
とおいて、
\(\overrightarrow{HQ}\cdot\overrightarrow{AB}=0\)
でおいた文字を求めます。
(2)の答えです。
ベクトルの単発的知識を使う問題の解き方
次は単発的知識を使う問題について解説していきます。
実際に問題をやっていみましょう。
問題5
ベクトル\(\vec{p}=\vec{a}+\vec{b}\),\(\vec{q}=\vec{a}-\vec{b}\)は\(|p|=4\),\(|q|=2\)を満たし、\(\vec{p}\)と\(\vec{q}\)のなす角は\(60^\circ\)である。
(1)2つのベクトルの大きさ\(|\vec{a}|\),\(|\vec{b}|\),および内積\(\vec{a}\cdot\vec{b}\)を求めよ。
(2)\(|t\vec{a}+\vec{b}|\)が最小となる実数\(t\)の値を求めよ。
(龍谷大)
ベクトルの二乗
問題文に与えられたベクトルの式を二乗すると情報が得られることがあるのです。→内積、長さなどが得られます
答えです。
問題6
三角形ABCは\(\overrightarrow{BA}\cdot\overrightarrow{CA}=0\)を満たしている。この三角形を含む平面上の点Pが、
$$ \overrightarrow{AP}\cdot\overrightarrow{BP}+\overrightarrow{BP}\cdot\overrightarrow{CP}+\overrightarrow{CP}\cdot\overrightarrow{AP}=0 $$
を満たすとき、点Pはどのような図形上の点であるか。またその図形を描け。
ただし、\(\overrightarrow{AP}\cdot\overrightarrow{BP}\)などはベクトルの内積を表す。
(岡山理科大)
こちらの問題はベクトル方程式の知識を使います。
ベクトル方程式
ベクトル方程式には直線や円・球などあります。
最も頻出なのは円や球です。
\(|\overrightarrow{OP}|=r\)
上記が円・球のベクトル方程式ですが、非常にシンプルに書けるがゆえに、条件式の中に組み込みやすいです。
問題を解くときも円・球のベクトル方程式が埋もれているのではないかと予想しながら解くと解きやすいです。
答えです。
問題7
三角形OABにおいて、OA=3,OB=4,内積\(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB}=8\)であるとする。
\(\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}\)で、\(s,t\)が\(3s+t≦3\),\(s+t≧1\),\(s≧0\)を満たしながら動くとき、点Pが描く図形の面積を求めよ。
(愛知工業大)
この問題では「ベクトルが表す領域」「ベクトルの面積公式」の知識を使います。簡単にまとめます。
ベクトルが表す領域
\(\overrightarrow{OP}=s\overrightarrow{OA}+t\overrightarrow{OB}\)
として、\(s,t\)が以下の範囲のときのベクトルが表す領域を示す。
(i)\(s≧0\)のとき
(ii)\(t≧0\)のとき
(iii)\(s+t≦1\)のとき
(iv)\(s≧0\),\(t≧0\),\(s+t≦1\)のとき
(a)\(0≦s≦1\)のとき
(b)\(0≦t≦1\)のとき
(c)\(0≦s≦1\),\(0≦t≦1\)のとき
ベクトルの面積公式
面積公式1つ目が
\(\triangle{OAB}=\displaystyle\frac{1}{2}\sqrt{|\overrightarrow{OA}|^2|\overrightarrow{OB}|^2-(\overrightarrow{OA}\cdot\overrightarrow{OB})^2}\)
2つ目が
\(\overrightarrow{AB}=(a_1,a_2)\)
\(\overrightarrow{AC}=(b_1,b_2)\)
のとき
\(\triangle{ABC}=\displaystyle\frac{1}{2}|a_1b_2-a_2b_1|\)
です。両方とも使いこなせるようにしましょう。
答えです。
点Pと三角形ABCの頂点との間に等式
$$ 3\overrightarrow{AP}-5\overrightarrow{BP}+9\overrightarrow{CP}=\vec{0} $$
が成り立っている。直線APと直線BCとの交点をDとする。次の問いに答えよ。
(1)\( \overrightarrow{AP} \)を\( \overrightarrow{AB} \)、\( \overrightarrow{AC} \)を用いて表せ。
(2)\( \overrightarrow{AD}=\alpha \overrightarrow{AP} \)を満たす実数\(\alpha\)を求めよ。
(3)点Dは線分BCをどのような比に内分あるいは外分する点になっているか。
(福岡教育大)