こんにちは、しゅがーです。
今回は、軌跡と領域について解説していこうと思います。
以前の記事
で図形と方程式の全体像をお見せしました。
今回の記事で説明する知識は上記の全体像のうち、(1),(7),(8),(11)の知識に該当します。
この軌跡と領域、苦手とする人は非常に多いです。
「解答を見てみても、すっきり理解できない。もやもやする。」
「軌跡と領域は順像法、逆像法などなど手法が多くてどれか思い出せなくなる」
「いざ自力でやろうと思うとできない」
こんな悩みを持っていて軌跡と領域が苦手になっている人が非常に多いです。
しかしながら、実は軌跡と領域に地頭は関係なく、ちゃんと正しく理解しているかどうかで問題が解けるかが決まるのがこの分野です。
言ってしまえば、正しい解説ができる人に教えてもらうという前提のもと、ちゃんと勉強すれば点が取れる分野なのです。
僕は高3の駿台全国模試で、この軌跡と領域に関する問題で満点を取りました。
この駿台全国模試は非常にハイレベルな模試で、全国の猛者たちが受ける中、軌跡と領域の平均点が
8.8点
です。
非常に差がつく問題といえます。
そんな中、僕がこの大問を丸々完答できたのはあることを意識していたからです。
これを意識するのと意識しないのとでは、軌跡と領域の問題を見る目がガラッと変わります。
冒頭で、
「軌跡と領域は順像法、逆像法などなど手法が多くてどれか思い出せなくなる」
という悩みを持っているんじゃないかといいましたが、常に「ひとつ」のことだけ意識していれば全部解き方は同じです。僕は順像法?逆像法?そんなの意識したことありませんし、理解していないです。目が腐るので理解しようともしてません。
では、もったいぶらず早速結論から。
そのあることの正体とは、変数と定数です。
この「変数と定数」という当たり前といえば当たり前の概念を、多くの受験生がなんとなくの理解で止まってしまっています。
しかし、今一度「変数と定数」に関する理解度を上げることで、実は軌跡と領域で物凄く力を発揮します。
それでは、詳しくやっていきます。
変数と定数とは?
例えば、こんな例題を見てみましょうか。
ここで「\(a\)を定数とするとき」の言い回しで、あなたはどこまでこの問題の本質を見抜けますか。
結論から言うと、
「\(a\)を定数とするとき」
\(\Longrightarrow\)「\(a\)を答えに含めていいですよ」
です。この考え方が後の軌跡と領域で非常に重要になってきます。
逆に言えば、「変数は答えに含めてはいけません」。
当たり前といえば当たり前なのですが、今一度確認します。
\(a\)を定数とするとき、\(y=x^2-2ax+2a^2\)の最小値を求めよ。
この問題において、変数は\(x\)です。だから当然、答えに\(x\)を含めてはいけません。当たり前のことですが、何度も意識してください。非常に重要な考え方です。
まとめると、
「その問題における変数と定数はどれか?」
→「定数→答えに含めていい文字 変数→答えに含めてはいけない文字」
と分類するのが重要だということです。今までは無意識でやってたと思うのですが、これを一時的にでもいいですから、意識的にやりましょう。
・変数→答えに含めていい文字
・変数→答えに含めてはいけない文字
「変数と定数」→「軌跡と領域」
さて、それではこの「変数と定数」の考え方を「軌跡と領域」に当てはめていきます。
まずは一旦、本記事で後ほど扱う軌跡と領域の問題とその答えをざっと見てほしいです。
\(xy\)平面において直線\(\small l:x+t(y-3)=0,tx-(y+3)=0\)を考える.(ただし,\(t\)は実数)
(1)\(l\)は\(t\)の値にかかわりなくある定点を通ることを示せ.
(2)\(t\)が実数全体を動くとき,\(l\)と\(m\)との交点はどんな図形を描くか.
(岐阜大)
(2)答え:\(\color{red}{x^2+y^2=9,(x,y)\neq (0,3)}\)
\(xy\)平面上の2点\((t,t),(t-1,1-t)\)を通る直線を\(l_t\)とする.次の問に答えよ.
(1)\(l_t\)の方程式を求めよ.
(2)\(t\)が\(0≦t≦1\)を動くとき,\(l_t\)の通り得る範囲を図示せよ.
(京都産業大)
(2)答え:
\(\color{red}{x≦-1}\)のとき\(\color{red}{x≦y≦-x,}\)
\(\color{red}{-1≦x≦1}\)のとき\(\color{red}{y≦\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{2}}\)かつ「\(\color{red}{y≧-x}\)または\(\color{red}{y≧x}\)」,
\(\color{red}{1≦x}\)のとき\(\color{red}{-x≦y≦x}\)
鋭い人は僕が言いたいことが分かったかもしれません。
そう、軌跡と領域においては本来変数であるはずの\( \color{red}{(x,y)}\)を答えに含める。
ここでさきほどの変数と定数のまとめを見てみると
・変数→答えに含めていい文字
・変数→答えに含めてはいけない文字
です。
つまり上記を適用すると、
「軌跡と領域においては答えを求める過程では本来変数であるはずの\( \color{red}{(x,y)}\)を定数とみる」
と言い換えられます。
この考え方を持ってください。
そして、軌跡と領域では本来定数であるはずの文字を消去します。
さきほどの問題と答えをもう一度見てみましょう。
\(xy\)平面において直線\(\small l:x+t(y-3)=0,tx-(y+3)=0\)を考える.(ただし,\(t\)は実数)
(1)\(l\)は\(t\)の値にかかわりなくある定点を通ることを示せ.
(2)\(t\)が実数全体を動くとき,\(l\)と\(m\)との交点はどんな図形を描くか.
(岐阜大)
(2)答え:\(\color{red}{x^2+y^2=9,(x,y)\neq (0,3)}\)
\(xy\)平面上の2点\((t,t),(t-1,1-t)\)を通る直線を\(l_t\)とする.次の問に答えよ.
(1)\(l_t\)の方程式を求めよ.
(2)\(t\)が\(0≦t≦1\)を動くとき,\(l_t\)の通り得る範囲を図示せよ.
(京都産業大)
(2)答え:
\(\color{red}{x≦-1}\)のとき\(\color{red}{x≦y≦-x,}\)
\(\color{red}{-1≦x≦1}\)のとき\(\color{red}{y≦\frac{1}{2}x^2+\frac{1}{2}}\)かつ「\(\color{red}{y≧-x}\)または\(\color{red}{y≧x}\)」,
\(\color{red}{1≦x}\)のとき\(\color{red}{-x≦y≦x}\)
わかりますか?
この2問において、本来\(t\)は定数ですよね。
しかし、\(t\)は答えに含んでいません。
つまり\(t\)を変数として扱うということです。
・変数→答えに含めていい文字
・変数→答えに含めてはいけない文字
また、「\(t\)を変数として扱う」合図として、キーワードがあります。
それが、「動くとき」みたいな記述です。もう一度問題を見てみると…
問題4→「\(t\)が実数全体を動くとき」
問題5→「\(t\)が\(0≦t≦1\)を動くとき」
っていうふうに、「〇〇が動くとき」みたいな記述がされているとき、「〇〇を変数として扱ってくださいね」って合図なのです。
さらにもっと数学的なことをいうと、この\(\color{red}{t}\)を消去するのが軌跡・領域を求めるということです。
しかし、なにもないところから勝手に文字を消去してはいけません。
文字を消去するには?
条件や条件式が必要です。
この条件や条件式を使って、本来定数であるはずの文字を変数として扱って、消去するのが軌跡と領域の解き方です。
上記の一文で軌跡と領域の解き方のすべてを表しました。何度も読んでみることをおすすめします。
まとめです。
(1)どの文字を変数と見てどの文字を定数と見るかを考える
(2)条件や条件式を使って、(1)で変数と見た文字を消去する
以上です。次からは問題を交えて解説していきます。
問題ベースで解説
問題1
2点\(A(6,0),B(3,3)\)と円\(x^2+y^2=9\)上を動く点\(Q\)を3つの頂点とする三角形の重心\(P\)の軌跡を求めよ.
さて、さっそくこちらの問題から軌跡と領域の解説を始めていきたいのですが、その前にこの問題を解くには前提知識が必要です。
その前提知識が、上記の(1)です。単純で知っている人も多いとは思いますが、確認として以下に示します。
3点\(A(x_1,y_1),B(x_2,y_2),C(x_3,y_3)\)を頂点とする\(\triangle{ABC}\)の重心\(G(x_G,y_G)\)の座標は
\(\displaystyle \scriptsize(x_G,y_G)=\big(\frac{x_1+x_2+x_3}{3},\frac{y_1+y_2+y_3}{3}\big)\)
この知識さえあれば、あとはさきほどの
(1)どの文字を変数と見てどの文字を定数と見るかを考える
(2)条件や条件式を使って、(1)で変数と見た文字を消去する
に当てはめれば解けます。
解答はこちら。
問題2
放物線\(y=x^2\)と直線\(y=m(x+2)\)が異なる2点\(A,B\)で交わっている.
(1)定数\(m\)の値の範囲を求めよ.
(2)\(m\)の値が変化するとき,線分\(AB\)の中点の軌跡を求めよ.
(東北福祉大)
解答はこちら。
問題3
円\(C_1:x^2+y^2=1\)と円\(C_2:(x-2)^2+(y-4)^2=5\)に点\(P\)から接線を引く.\(P\)から\(C_1\)の接点までの距離と\(C_2\)の接点までの距離との比が\(1:2\)になるとする.このとき,\(P\)の軌跡を求めよ.
(熊本大)
この問題は前提知識が必要です。
その前提知識が、上記の(8)です。
2円の位置関係に関しては、以下にまとめます。
半径がそれぞれ\(r,r’\) \( (r>r’) \)である2つの円の中心間の距離を\(d\)とする。
このとき、以下が成立する。
解答はこちら。
問題4
\(xy\)平面において直線\(\small l:x+t(y-3)=0,tx-(y+3)=0\)を考える.(ただし,\(t\)は実数)
(1)\(l\)は\(t\)の値にかかわりなくある定点を通ることを示せ.
(2)\(t\)が実数全体を動くとき,\(l\)と\(m\)との交点はどんな図形を描くか.
(岐阜大)
この問題も前提知識が必要です。
その前提知識が、上記の(7)です。
「どんなkに対しても通る点」みたいなキーワードが来たら処理の方法は決まっていて、それを以下に示します。
「どんなkに対しても通る点」
→直線の式をkについての恒等式と見る
→kについて整理する
→\(Ak+B=0\) がkについての恒等式
→\(A=0,B=0\) の連立方程式を解く
解答はこちら。
問題5
直線\(y=2ax+a^2\cdots\)①について、\(a\)がすべての実数値をとって変化するとき、直線①が通りうる領域を図示せよ。
いよいよ領域の問題です。
解答はこちら。
問題6
実数\(x,y\)が\(x^2+y^2≦1\)を満たしながら変わるとき、点\( (x+y,xy) \)の動く領域を図示せよ。
最後の問題です。この問題も領域の問題です。
この問題では知っておかなければならない処理の方法があります。
\((x,y)\)がある条件を満たしながら動くときの\( (x+y,xy) \)の領域ときたら…
$$ x+y=X,xy=Y $$
とおく。さらに二次方程式の解と係数の関係から、
\(x,y\)は\(t\)の二次方程式
$$ t^2-Xt+Y=0 $$
の実数解である。よって\(t\)を変数と見たときの二次方程式の解と配置問題に帰着する
上記の流れを自分で組み立てられるようになると完璧です。(これは知らないとできないです)
これができると、今回の問題に当てはめると
変数とみなす→\( (x,y) \)→\(t\)(この一文字で良い←これがめちゃくちゃ偉い)
定数とみなす→\( (x+y,xy) \)→\((X,Y)\)
となります。
解答はこちら
続きが以下の記事です。
\(a\)を定数とするとき、\(y=x^2-2ax+2a^2\)の最小値を求めよ。